角野さんのまいにちまいにち

ポルトガルのリスボン
2006年 12月 25日 |
c0045041_17272471.jpg今年も後わずかになりました。おげんきですか?
夏の鎌倉文学館の「角野栄子の世界」展が終わって、さあ、これから仕事です、なんてここに書いたのに、私はなかなか集中することが出来ず、ふわふわした気持ちのまま、旅行にでかけてしまいました。
出掛けた先は、いつもの事ながらポルトガルのリスボンです。ヨーロッパの一番西にある国です。ブラジルにいたことがあるので、言葉が少し解るせいか、どこかぴったりと来る国なのです。一番はじめに行ったのは、1962年。ブラジルから日本に帰る途中でした。リスボンの町はその頃と余り変わっていません。その後、何回も行っているのに、同じ所をとった写真は、毎度同じ姿をしています。
リスボンの路面電車の二十八番も、四十四年前と変わらず、町を横切るように走っています。狭い上に、ひどく急な坂道を驚くようなスピードで走ります。それも昔と変わりません。その道は、細身に作られた路面電車がやっと通れるくらい狭く、しかも曲がりくねっているのです。それに沿って人の肩幅ぐらいの、細い歩道が続いています。その道を当然自動車も走るわけで、そのときは、歩道に乗り上げて電車とすれ違う事になります。そのとばっちりは歩いている人にも降りかかり、そばの建物の壁に背中を押しつけるようにしてやり過ごすことになります。よく事故が起きないと感心してしまいます。でも古い町並みを手で触れてるように、身近な気分にさせてくれるこのスリル満点のこの乗り物は、町の人だけでなく、観光客にも大人気です。
この町をたずねるたびに、私も数回は乗ります。対面式の狭い座席にすわり、リスボン子の会話を耳にしながら走るのは、とても楽しいのです。
c0045041_17313355.jpgこの電車にただ乗りする子どもたちがいます。電車が走り出したら、追いかけて後ろにぶら下がるのです。曲がりくねった道ですから電車はおしりを振りながら走っていきます。振り落とされるのではないかとはらはらさせられます。でも子どもたちは実に得意げな顔で、片手をはなしたりするのです。それを大人たちは、にやりとしながら見ています。注意したりする人もいません。でもけっして無関心ではありません。運転手は走り出すとき、かならず後ろをみて、子どもたちがいるかどうか確かめ、狭い所に来れば、細かく子どもたちに目をくばっています。子どもたちだって、危険を承知しながら、でも細心の注意をしながら乗っているのです。当然いけないことではあるのですが、このこたえられないようなスリルと、楽しさを、大人たちは子どもから取り上げようとはしないのです。運転手は運転手なりに、周りの大人は大人なりに、見守りながら、子ども時代にしか出来ないいたずらの思い出を、自分と同じように持たせてやりたい、というような暖かみを、私は感じました。
by Eiko_Kadono | 2006-12-25 17:34 | 日記 |